各社のMTFを比べてはいけない?

2021/11/12

大変申し訳ございません。

読者の方に教えて頂いたのですが、ネット情報によればMTFには数値が良い方向に出る幾何光学的MTFと悪い方向に出る波動光学的MTFとがあり、光学メーカーによって表示方法が異なるので、異なるメーカーのMTFは比較してはいけないとの事です。

ご存知かもしれませんが、幣サイトではボケ易い単焦点レンズのベスト15なる記事において、各社のレンズをMTFを使って度々比較してきました。


Canon RF50mm F1.2 L USM

NIKKOR Z 50mm f/1.2 S

SONY FE 50mm F1.2 GM

ちなみに下のチャートは、主要3社の50mm F1.2レンズにおける絞り開放時のMTF曲線を苦労して1枚にまとめたものです。

これを見る限り、マウント径が小さくて、さらにレンズの枚数が少ないソニーのFE 50mm F1.2 GMが意外に健闘しているのが分かります。

と言っていたのですが、キヤノンが辛めの波動光学的MTFを採用しているのに対して、ニコンとソニーは甘めの幾何光学的MTFを採用しているので、これらを同列に比較してはいけない事になります。

弱小ながら真実至上主義を旨としていた幣サイトが、知らない事とは言え誤った情報を流し続けていたとは、何と情けない。

と言いたい所ですが、ご安心下さい。

そこまで間抜けではありません。

ご存知ないかもしれませんが、MTFには2種類ある事や、メーカーによってその表示方法が違いそうだという事は、以前から良く知られていた話です。

ではそれを知りながら、なぜ異なる表示方法のMTFチャートを使って各社のレンズを比較していたかと言えば、明るい単焦点レンズの場合、全く同じとまでは言わないまでも両者はほぼ同じカーブを描くからです。

下の2枚のチャートは、両方のMTFを併記しているシグマの50mm F1.4 DG HSM | Artの開放時のMTFチャートの抜粋なのですが、この二つのチャートを見比べて頂ければ、殆ど差がない事をすんなりご納得頂ける事でしょう。

シグマ50mm F1.4 DG HSM | Artにおける絞り開放時のMTF曲線

では何故似たカーブになるかですが、それに関して先ず幾何光学的MTF波動光学的MTFの違いについてお話したいと思います。

下はシグマのHPにある両者の違いなのですが、これを読んでスンナリご理解頂け方は少ないでしょう。

では小学生にも分かる様に、(MTFは置いておいて)単に幾何光学波動光学の違いについてご説明します。

先ず幾何光学とは、その昔学校で習った様に光は一直線に進むとした考え方です。

下にある見慣れたレンズの結像図は、光は一直線に進むとした幾何光学の代表的な説明図です。(屈折や反射は幾何光学の範疇です)

昔習ったレンズの焦点距離と実像の絵

ところが光が穴を通り抜ける場合、穴が大きければ一直線に進むのですが、それがどんどん小さくなると、何故か曲がり始めるのです。

光が通る穴が小さくなると、光は曲がり始める

もう少し正確に言うと、大きな穴でも穴のフチの部分では光は曲がっているのですが、直進する光があまりに強いので、それが目立たないと言った方が良いかもしれません。

この小さなを穴を通った時に光が曲がる特性(回析)を考慮したのが、波動光学です。

このため、波動光学の方がより現実に近く、それで求めたMTFの値も(幾何光学より)悪くなるという訳です。

ただし、穴が大きければ(すなわち大口径レンズの場合)通過する光はほぼ一直線に進むので、幾何光学でも波動光学でもMTF曲線は似た様なカーブになるという訳です。

それでは次にMTFについてご説明したいのでが、お伝えしたい事が多々あるので(言いたい事が山ほどあるので)、これについてはまた次の機会にしたいと思います。

 

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