目次
はじめに
iPhone 14 Proを買った貴方。
Appleの広告によれば、このメインカメラに先進的なクアッドピクセルセンサーが採用されたそうです。
そう言われても、何がどう先進的なのかご存知の方は少ないでしょう。
そんな訳で今回は、クアッドピクセルセンサーがどんな物で、それによってどの程度良い事があるのか技術的な解説をしたいと思います。
クアッドピクセルセンサーとは
クアッドピクセルセンサーとは、下にあります様に1色のカラーフィルターの下に4分割した受光素子があり、それぞれにオンチップレンズが1枚ずつ乗っています。
この最も小さい受光素子を1画素とした時が4800万画素で、同じカラーフィルターの下にある4つの受光素子を1画素とした時が1200万画素になるという事です。
すなわち1枚の撮像素子でありながら、1200画素の高感度低解像度と4800万画素の低感度高解像度のデュアル解像度が可能になるという訳です。
そう聞くと正に画期的なのですが、実はそうでもないのです。
クアッドピクセルセンサーの4800万画素時
先ず4800万画素にした場合ですが、残念ながら一般的なベイヤー配列の4800万画素の画質よりかなり劣ります。
その理由は、通常のベイヤー配列の場合、下の絵に有ります様に異なる色の画素がすぐ隣にあるので、色の補完(元々1色の色情報しかない1画素に3色の色情報を持たせる事)が比較的容易にできます。
ところがクアッドピクセルセンサーの場合、隣接する画素の大半は同じ色の画素のため、色の補完が非常に難しいのです。
かなり大雑把ですが、クアッドピクセルセンサーの場合、4800万画素の補完精度はベイヤー配列の半分以下と言って良いかもしれません。
このため、クアッドピクセルセンサーにおける4800万画素とは、4800万画素モドキと言った方が適切でしょう。
ちなみに下はソニーのHPにあります、クアッドピクセルセンサーの1200万画素と4800万画素の画像を比較したもので。
ご覧の通り、確かに4800万画素のときの解像度は、1200万画素のときよりも良いのですが、4倍も解像度が良いとは到底思えません。
実はフルサイズのミラーレスカメラであるソニーのα7S IIIにも、このQuad Bayerが採用されているのですが、高解像度での画質が許容レベルに達しなかったのか、1200万画素の低解像度しか出力できない仕様になっています。
ただし撮像素子の一部分を拡大して使うデジタルズームの場合、拡大するとどんどん画像が粗くなっていくのですが、少なくともその画像よりはこのクアッドピクセルセンサーの4800万画素を使った方がマシと言えます。
このためiPhone 14 Proでは、焦点距離を2倍にした48mm時はこの撮像素子中心部の1200万画素を使っているという訳です。
また全画面を4800万画素で出力できるのは、後処理が必要なApple ProRAWで撮影したときのみです。
この理由は、RAWファイルならばJPEGに変換(現像)する際、どの程度の画質まで許容するかユーザーが関与できるからなのでしょう。
クアッドピクセルセンサーの1200万画素時
お次はクアッドピクセルセンサーにおける、1200万画素の画質です。
これについては、4画素をまとめれば、一般的なベイヤー配列と同じですので、補完に伴う画質の低下はありません。
ただし撮像素子の構造を考えれば、一つの受光素子を4分割して合算するよりも、元から一つの大きな受光素子を使った方が受光量が多いのは間違いありません。
そんな訳で、1200万画素にした場合であっても、純粋な1200万画素より画質は劣る事になります。
ただし撮像素子のサイズが、それまでの1/1.7型から 1/1.3型に約1.7倍も大きくなっていますので、従来機よりは画質は良くなっているのは間違いないでしょう。
まとめ
以上をまとめますと、以下の様になります。
iPhone 14 Proのメインカメラに搭載されたクアッドピクセルセンサーは、1200画素の高感度低解像度と4800万画素の低感度高解像度のデュアル解像度が使える。
ただし4800万画素時は、通常のベイヤー配列の撮像素子より補完処理が難しいので、画質(色再現性)は少なからず落ちる事になる。
このため全画面4800万画素で撮れるのはApple ProRAWで撮る場合のみで、画像ファイルはデジタルズームより画像が良い2倍ズームのみである。
1200万画素の場合も、純粋な1200万画素より劣るものの、撮像素子自体が大きくなっているため、従来機よりは画質は良くなっている。
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