ニコンの魔訶不思議なISO AUTO

2022/06/23

はじめに

Nikon Z 50で写真を撮ったら、予想外の事が起きてしまいました。

先ずは下の写真を見て頂けますでしょうか。

ISO AUTOの絞り優先モード(F5.6、1/2000秒、ISO720)

ただの逆光の写真なのですが、見て頂きたいのはその露出設定です。

シャッタースピードが1/2000秒と無駄に速くなっていると共に、ISO感度はISO720とこれまた無駄に高くなっています。

ここは当然、同じ露出になるISO100の1/300秒で撮るべきでしょう。

ではなぜこんな設定なったかと言いますと、ISO AUTO絞り優先モードを使って絞りをF5.6にしただけなのです。

すなわち、シャッタースピードとISO感度はカメラが勝手に決めたのです。

ところが、もし他社(キヤノン、ソニー、フジフィルム等)のカメラで同じ条件で撮れば、間違いなくISO100の1/300秒の設定になります。

にも関わらず、何故こんな露出設定になってしまったのでしょうか。

という事で早速調べてみます。

ISO AUTO時の低速限界設定

こうなった原因として誰でも思い付くのは、ISO AUTO使用時のシャッタースピードの低速限界設定が速く(例えば1/2000秒に)設定されているのではないかという事でしょう。

それを確認してみました所、オートになっていました。

この低速限界設定オートとは、下の説明にあります様にカメラがレンズの焦点距離に合わせて自動的にシャッタースピードの下限を設定してくれるモードです。

Nikon Z 50の説明書の抜粋

一般的には焦点距離の逆数で、画角が24mm相当であれば、1/24秒です。

にも関わらず1/2000秒に設定されるのはどういう訳なのでしょう。

また低速限界設定オートにした場合、それを±2段の範囲で調整できる様になっているのですが、確認した所デフォルトの中央設定になっています。

すなわち、シャッタースピードやISO感度が上がったのは、低速限界設定とは全く関係なさそうです。

原因解明

途方に暮れていたのですが、カメラの設定を色々変えてようやくその理由が分かりました。

信じられないかもしれませんが、Nikon Z 50の場合、ISO AUTOにしても基準となるISO感度が設定できるのです。

これだけ聞かれると、(他社機しか使った事がない方は)何だそれは?と思うわれる事でしょう。

何しろ一般的なISO AUTOとはカメラが自動でISO感度を設定するのですから、もしそれでISO感度を設定したらISO感度固定になってしまいます。

ところが、Nikon Z 50はそれができてしまうのです。

具体的には、ISO AUTOの状態で、ISOボタンを押して後ダイヤルを回すと、ISO AUTOの状態でありながらISO感度を変更できるのです。

ISO AUTOの状態でISO感度を設定したところ

そしてもしISO感度を固定したいのならば、前ダイヤルを回してISO AUTOを解除しなければならないのです。

ISO感度を固定したところ

今回のケースですと、(こんな事とは露知らず)その前の撮影でISO AUTOの状態でISO感度を3200に設定したため、カメラはひたすらISO3200に近づけて撮ろうとしてシャッタースピードを無駄に1/2000秒に上げていたのです。

すなわち、Nikon Z 50のISO AUTOとは、ISO感度をユーザーが設定でき、カメラはそのISO感度を極力維持する様に制御するのです。

これについては、マニュアルを見渡してもどこにも記されていません。

また確認したのはNikon Z 50ですが、他のZシリーズも同じでしょう。

さらに調べていくと、このISO AUTOの魔訶不思議な仕様は、ニコンの一眼レフ時代から採用されていた模様です。

これってニコンユーザーは認識されているのでしょうか?

それでやっと分かったこと

それはともかく、これでようやく分かった事があります。

先ず一つ目は、他社機でしたらISO感度の中にISO AUTOが同列で入っているのですが、ニコン機にはISO AUTOは入っていません。

実際Nikon Z fcにおいては、ISO感度ダイヤルがありながら、その中にはISO AUTOの項目はありません。

Z fcのISO感度ダイヤルにはSOS AUTOが入っていない

以前から不思議に思っていたのですが、ニコンではISO感度とISO AUTOは独立したものとして扱っているからなのです。

二つ目は、Nikon Z 50のファインダーを覗いていると、何故かISO AUTOの表示がいつも点滅していて目障りだったのですが、これはISO AUTOで設定したISO感度を外れた事を示していたのです。

まとめ

以上をまとめますと、以下の様になります。

①ニコン機においては、ISO AUTOにおいても、基準となるISO感度を設定できる。

②その場合、カメラは基準となるISO感度を極力維持して撮影しようとする。

③このため、それを知らずにISO AUTO時のISO感度をうっかり上げてしまうと、無駄にISO感度を上げた写真を撮ってしまう。

④このため、もし他社と同じ様にISO AUTOを使いたいのであれば、ISO AUTO時のISO感度は100に設定しなければならない。

活用方法

それでは最後にこのニコン独特のISO AUTOの活用方法を考えてみます。

ですが、残念ながら思い付きません。

ISO感度の基本は極力画質の良いISO100で使う事で、敢て高いISO感度を基準とする用途は全くと言って良いほど思い浮かびません。

強いて言えば、一部のデジカメにおいてはノイズレベルが最小になるのはISO100以外のものもあるのですが、RAWファイルのダイナミックレンジは常にISO100で一番広くなりますので、やはりISO100以外にするのは抵抗があります。

いずれにしろISO感度の中にISO AUTOが無い事、及びうっかりISO AUTOでISO感度を設定してしまうと、無駄にISO感度を上げて撮ってしまうデメリットに勝るメリットは無いでしょう。

そんな訳で、他社と同じ仕様にすべきだと思うのですが、いかがでしょうか。

6件のコメント

Nikonのカメラでは確かにISOAUTOの際の上限値を設定できましたね。ISOAUTOに設定した後にISOを設定するとそれ以上の数値には、上がらないという設定だと思いました。暗所ではISOAUTOでの上限値を上げすぎていると今回のようなことが起こりうるかと思います。Z50ですとISOあげすぎるとフルサイズに比べてやはり画像があれるのは早いですし気を付けておきたいですね。他社の動作も気になりますし今度試してみたいと思います。

お便りありがとうございます。

弊記事の説明不足かもしれませんが、本件はご指摘頂きました他社機にもあるISO AUTOにおけるISO感度の”上限値”設定の話ではありません。

ニコン機では、ISO AUTOにおいてISO感度の”基準値”が設定できるという話です。

もしニコン機と他社機をお待ちでしたら、是非その違いを確認してみて頂ければと思います。

ご説明いただきありがとうございます。他社機を自前では持ち合わせておりませんが、近く他社機持ちの知人と会う機会がありますので、ぜひとも確認させていただきたく思います。

今後の記事も楽しみにしております。またコメントさせていただく機会もあるかと思います。その際はまたよろしくお願いいたします。

ニコン機を使ったことのない私にはびっくり仰天のお話です。
キヤノンは、他社に比べてISOオートの導入が遅く、当時持っていた1D3には搭載されていませんでした。代わりにセイフティシフトなるものがあり、設定したISO値で適正露出が得られない時のみにカメラが勝手にISO値を変更するものです。今回のニコン機のものとは別ですがそんな機能を思い出しました。
今回のニコン機のは何なのでしょうね?特許絡みで、普通のISOオートの搭載を見送っているとか?

野鳥撮影で、これを知りisoオート400にし、シャッタースピード優先モードでss1/650にし、絞りを最小にしておくと、明るい環境ではiso400で絞りが大きい方になって撮影できます。
なるべく感度を抑えたい場合、逆手にとって活用しています。

Z8のユーザーです。貴重な情報有り難うございました。
私のカメラで試した結果をお知らせいたします。
露出補正ボタンを押しながらフロントダイヤルを操作すると、ISOAUTOとISO固定が自由に設定できることが解りました。

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