NDフィルターを付けたら、
ストロボの光量は増やす必要があるのか?

2021/09/14(火):発行
2022/08/02(火):更新

はじめに

過去2回、日中シンクロにおけるストロボの光量の話をしてきましたが、いよいよ佳境に近付いてまいりました。

今回はレンズにNDフィルターを付けて撮る場合、ストロボの光量は増やす必要があるかどうかについて考えてみます。

レンズにNDフィルターを付けたら、ストロボの光量はどうなる

レンズにNDフィルターを付ければ当然カメラに入る光量が減るので、ストロボの光量は増やさなければいけないと思うものの、NDフィルターを付けた事により絞りを開けたりするので、変わらない様な気もしないではありません。

どちらなのでしょうか?

結論

先に結論をお伝えすると、NDフィルターを付ける事によって、(暗くなった分)絞りを開けたりISO感度を上げた場合、ストロボの光量は変える必要はありません。

ただしシャッタースピードを遅くすると、NDフィルター分ストロボの光量をアップしなければならなりません

なぜそうなるか、これから分かり易くご説明します。

NDフィルターが無いとき

先ずは初期状態であるNDフィルターが無い場合の日中シンクロを考えてみます。

下の写真をご覧下さい。

1/250秒 F8 ISO100(EV14)

これは真夏のビーチでシャッタースピード1/250秒、絞りF8ISO100で撮った人物写真です。

広角で撮ったので人物までの距離は、2mという事にしておきましょう。

この逆光気味の人物をストロボを焚いて明るくして撮る場合、丁度良いストロボの光量(ガイドナンバー)は、距離2mに絞り値のF8を掛けたGN16(2×8)になります。

絞りを開ける場合

それでは次に、光量を半分に(2段)落とすND2フィルターを付けて、その分絞りを1段開けた場合を考えてみます。

絞りを1段開けるので、絞りはF8からF5.6になります。

被写体までの距離が2mだとすると、ガイドナンバーは5.6×2のGN11になり、NDフィルターを付ける前のガイドナンバーGN16(2×8)から比べると小さくて済みます。

と言いたい所ですが、レンズに入ってくるストロボの光はND2フィルターによって1段分減りますので、この分の光量を補わなければなりません。

ではガイドナンバー14の光量を1段分アップするといくつになるかと言えば、これを1.4倍(正確には√2倍)してGN16になるという訳です。

驚かれるかもしれませんが、同じ露出の写真であればどんなに濃いNDフィルターを付けても、絞りを開けて調整する限りストロボの光量は変わらないのです。

NDフィルターを付けても、その分絞りを開ければ入ってくる光量は同じ

これは上の図にあります様に、NDフィルターを付けても、その分絞りを開ける事になるので、レンズに入ってくる光は外光もストロボの反射光も同じになると言えば、ご納得頂ける事でしょう。

ISO感度を上げる場合

ところでNDフィルターを付けた場合、絞りを開けずにISO感度を上げる手もありますので、これについても考えておきましょう。

1/250秒 F8 ISO100(EV14)

この場合絞りはF8のままで、距離は2mですので、ガイドナンバーは16のままです。

ただしND2フィルターによって1段分ストロボの光量は減りますので、それを補うためにガイドナンバーはその1.4倍の23が必要になります。

このため、ストロボの光量は増やさなければいけない、と言いたい所ですがそうではありません。

ISO感度を1段上げると、ガイドナンバーも必然的に1.4倍に増えるのです。

カメラに内蔵されている小型ストロボでも、ISO感度を上げると遠くまで光が届くのはこれが理由です。

ですからガイドナンバー23を再度1.4で割って、結局元の16で済むのです。

すなわちNDフィルターを付けても、その分ISO感度を上げれば、ストロボの光量は変わらないのです。

説明が今一なので、何かキツネにつままれた様な気分かもしれませんが、これが事実です。

下の図にあります様に、ISO感度を上げれば実質的にストロボの光量を上げた事になるので、NDフィルターで光量が減った分を補えると言えば何となく分かって頂けるでしょうか。

NDフィルターを付けても、その分ISO感度を上げれば露光量は同じ

そんな訳で、どんなに濃いNDフィルターを付けても、露出が同じであればストロボの光量は常に変わらない、と言いたい所ですがこれは間違いです。

シャッタースピードを調整する

例外はシャッタースピードです。

ND2フィルターを付けた事によって、シャッタースピードを1/125秒にしたとします。

すると背景の明るさは変わらないものの、閃光であるストロボの光量だけは(シャッタースピードの影響を受けずに)ND2フィルターによって1段分減らされます。

NDフィルターを付けた分シャッタースピードを遅くすると、ストロボの光量は足りなくなる

これを補うために、ガイドナンバーは1.4倍の23が必要になるのです。

すなわちNDフィルターを付けて、その分シャッタースピードを遅くすると、ストロボの光量は増やさなければならないのです。

まとめ

以上をまとめますと、下の表にあります様にどんなに濃いNDフィルターを付けても、絞りとISO感度を調整する限りストロボの光量は変わらない。

露出項目\条件 NDフィルター無し ND2フィルター有り
絞り調整 ISO感度調整 シャッタースピード調整
絞り F8 F5.6 F8 F8
ISO感度 ISO100 ISO100 ISO200 ISO100
シャッタースピード 1/250秒 1/250秒 1/250秒 1/125
ガイドナンバー 16 16 16 23

ただしシャッタースピードを遅くすると、NDフィルター分光量をアップしなければならない、という事になります。

ご理解頂けましたでしょうか?

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