フルサイズ機に対して、小サイズ機(APS-Cサイズ機やマイクロ4/3機等)のメリットは何でしょう。
そう訊かれれば、誰しも以下の様に答えられる事でしょう。
小サイズ機の長所
①撮像素子が小さいので、レンズを含めて小型軽量で安い。
②同じ焦点距離なら画角が狭くなるので、望遠に有利。
③同じ絞り値でも被写界深度が深くなる。
では、反対に小サイズ機のデメリットは何でしょうか?
そうなると当然ながら以下でしょう。
小サイズ機の短所
画質と高感度特性がフルサイズ機より劣る。
その上で、小サイズ機に適した撮影ジャンルは何でしょうか?
そう訊かれれば、下が直ぐに思い浮かぶ所でしょうか。
小サイズ機に適した撮影ジャンル
①小型軽量で安い事から家族写真や旅行にスナップ撮影
②望遠撮影に有利な事から野鳥やスポーツ撮影
ところが、長所③である被写界深度が深くなるメリットが故に、フルサイズ機より明らかに向いている撮影ジャンルがあるのです。
今回はそれについて述べてみたいと思います。
目次
フルサイズ機と小サイズ機のボケの違い
それでは先ず、フルサイズ機に対して小サイズ機はどれくらい被写界深度が深くなるのか確認しておきましょう。
フルサイズ機とAPS-Cサイズ機の様に2機種間の比較写真なら見た事があるかもしれませんが、フルサイズ機から(スマホで一般的な)1/2.3インチ機までの計5機種(①フルサイズ機、②APS-Cサイズ機、③マイクロ4/3機、④1型機、⑤1/2.3型機)の比較写真は見た事はないのではないでしょうか。
そんな訳で、撮像素子の大きさが異なる5種類のカメラにおいて、同じ画角の同じ絞り値で撮った写真を並べると以下になります。
これをご覧頂きます様に、全て同じ露出設定(F1.8、1/8000秒、ISO100)でありながら、撮像素子が小さくなるにつれて背景のボケ量が小さくなっていくのが分かります。
この理由は、同じ画角にするためには小サイズ機ほど焦点距離の短いレンズ(広角レンズ)を使う必要があるため、同じ絞り値であっても被写界深度が深くなるからです。
と、ここまでは良く知られた話なのですが、ここからが本題です。
ボケを同じにしたらどうなるのか
上の写真の場合、露出設定はいずれも同じF1.8、1/8000秒、ISO100でした。
ではここでフルサイズ機において、1/2.3型機と同じ被写界深度の写真を撮るとすると、どうなるでしょう。
当然ながら絞りを絞って、その分ISO感度を上げなければいけません。
具体的には、フルサイズ機で1/2.3型機と同じ被写界深度にするには、絞りをF11(正確にはF10)まで絞って、ISO感度をISO6400(正確にはISO5500)まで上げる必要があります。(詳細はこちら)
その場合、フルサイズ機と1/2.3型機の画質は理論上同じになってしまうのです。
すなわち、被写界深度が同じになった瞬間にフルサイズ機と小サイズ機の画質は同じになって、フルサイズ機のメリットが消えてしまうのです。
もっとしつこく言わせて頂ければ、被写界深度の深い写真を撮るのであれば、何も大きくて重くて高価なフルサイズ機など必要なくて、小サイズ機で十分(フルサイズ機は無駄)だという事です。
小サイズ機に適した撮影ジャンル
ここまで知って頂いた上で、いよいよ小サイズ機に適した撮影ジャンルを挙げてみます。
ステージ撮影
一つ目はステージ撮影です。
ステージ撮影においては、極力人物と背景の両方にピントを合わせて撮りたいものです。
そうなると、小サイズ機でしたら同じ被写界深度でもフルサイズ機より絞りを開けて撮る事ができますので、シャッタスピードなりISO感度を稼ぐ事ができます。
星空ポートレート撮影
二つ目は星空ポートレートです。
この場合も、絞り値が同じでれば、小サイズ機の方がフルサイズ機より星を点で写す事ができます。
確かに星だけ撮るのには不利なのですが、被写界深度が同じであれば絞りを開けられる分ISO感度を下げられるので、フルサイズ機と差はないのです。
例えばフルサイズ機のF4、30秒、ISO6400と同じ写真を、同じ画素数のマイクロ4/3機であればF2、30秒、ISO1600で撮れてしまうのです。
望遠撮影
そして三つ目は望遠撮影です。
望遠撮影の場合、どうしても被写界深度が浅くなりますので、なるべくだったら絞りは絞り気味にして撮りたいものの、それではシャッタスピードやISO感度を稼げなくなってしまいます。
ところが小サイズ機の場合、望遠撮影においても同じ露出設定でありながらフルサイズ機より被写界深度を深くできるのです。
そんな訳で、極力望遠撮影の歩留まりを良くしたければ、小サイズ機を選んだ方が有利と言えます。
また既にお伝えしました様に、小サイズ機の方が望遠効果が高く、レンズも小型軽量になりますので、望遠撮影なら小サイズ機の独擅場と言えます。
ただし動き回る被写体を望遠レンズで追うのは至難の業ですので、その場合はフルサイズ機を使って広めの画角で撮っておき、後でトリミングをするのが無難かもしれません。
マクロ撮影
四つ目はマクロ撮影です。
これも前述の望遠撮影と同様に被写界深度が非常に浅くなります。
このため被写界深度を深くするのでしたら、小サイズ機で十分と言えます。
余談ですが、今年OMDSから発売されたED90mm F3.5 Macro IS PROは、かなり画期的です。
水中撮影
五つ目は水中撮影です。
水中撮影の場合、背景をボカした写真を撮る事はまずありません。
むしろ背景の珊瑚がボケると汚く見えてしまう事から、これまた被写界深度が深くて取り回しの楽な小サイズ機の方が有利と言えます。
特にOMDSは水中ハウジングを豊富に取り揃えているのも、好感触です。
まとめ
そんな訳で、
被写界深度を深くしたいステージ撮影、星空ポートレート、望遠撮影、マクロ撮影、水中撮影においては、大きくて重くて高価なフルサイズ機よりむしろ小サイズ機の方が断然お勧め
と言えます。
なお動画においても色々優位性がありますので、これについてはいつかまたお伝えしたいと思います。
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