動画の無劣化デジタルズームはカメラとレンズの価値観を変えるかもしれない

2022/10/23

余り知られていませんが、一眼レフに初めて動画機能(HD24P)が搭載されたのは2008年9月に発売されたNikon D90でした。

世界で初めて動画機能(HD24P)を搭載したAPS-Cサイズ一眼レフのNikon D90

そして同年11月に、フルサイズ一眼レフに初めてFHD30Pの動画機能を搭載したのがEOS 5D MarkIIです。

フルサイズ一眼レフに初めて動画機能(FHD30P)を搭載したのEOS 5D Mark II

これによって、大型撮像素子を搭載したカメラで被写界深度の浅い動画が撮れる様になり、一眼レフによる動画撮影が一気にブレイクしたという訳です。

さて、いつもの通り前置きが長くなってしまいましたが、本題はこれからです。

先日こちらの記事でお伝えしました様に、フジフィルムのX-H2において、4K動画で解像度低下のない2倍のデジタルズームが使える様になりました。

恐らく世界で初めて動画のデジタルズームを搭載したフジフィルムのX-H2

これによって、例えば下にあります23mm F1.4(フルサイス換算35mm F1.4)の単焦点レンズであっても、解像度の低下無く23-46mm F1.4(フルサイス換算35-70mmF1.4)のズームレンズとして使う事ができるのです。


XF23mmF1.4 R

ただしデジタルズームで2倍に拡大した場合、使用する撮像素子の領域はマイクロ4/3並みの大きさになりますので、被写界深度は2段深いF2.8相当になります。

すなわちデジタルズームの場合、望遠にしても被写界深度は広角のままという事です、

デジタルズームの場合、ズーミングしても被写界深度は変わらない

とは言え、ズーミングしても被写界深度は変わらないという事は、動画撮影にとってはむしろメリットと言えるかもしれません。

またこのデジタルズーム自体は、撮影時に動画を8Kで撮っておいて、後で4K動画に編集する際、(解像度の低下なく)2倍に拡大すのと同じ事なのですが、全編を8Kで撮らなければいけないのと、全編を4Kで撮れるのとでは、その差は歴然です。

言い過ぎだと言われるかもしれませんが、この様に明るい単焦点レンズを明るいズームレンズとして使用できるのは、それこそカメラで動画を撮れる様になったのと同じくらい画期的な事と言っても良いのではないでしょうか。

これを更に突き詰めると、この動画のデジタルズーム機能は、今までのカメラとレンズに対する価値観を大幅に変えてしまうかもしれません。

というのは、ご存知の様に幣サイトは画質が落ちる高画素機には全く興味はなかったのですが、デジタルズームが使えるのであれば、そのために高画素機を許容しようかなと思い始めてきています。

また今までしたら、動画を撮る場合でも、1本の標準ズームレンズと複数の単焦点レンズが必要でした。

ところが、動画でデジタルズームが使えるとなると、少なくとも動画撮影においては1本の明るい広角系の単焦点レンズがあれば、ほぼ事足りてしまいます。

そうなると、問題はフルサイズ機においても、この機能を搭載してくれるかどうかです。

下手をすると、最も大きな収入源であるレンズの売り上げ本数を減らす事になりかねないので、もしかしたら各メーカーとも慎重になるかもしれません。

とは言いながらも、APS-Cサイズ機ながらフジフィルムが先陣を切ってくれた以上、フルサイズ機に本機能が搭載されるのは時間の問題かもしれません。

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