目次
はじめに
動画の読み出し方法は、オーバーサンプリングとドットバイドットのどちらの方が画質が良いのでしょう。
下の様な宣伝文句を読むと、誰もが当然ながらオーバーサンプリングの方が画質が良いと思われる事でしょう。
ですが、幣サイトの見解は真逆です。
画質の良いのは、間違いなくドットバイドットです。
できればここで、撮影条件を同じにしたオーバーサンプリングとドットバイドットの動画をお見せしたい所ですが、残念ながら貧乏サイトには叶わぬ夢です。
かと言って、こんなに大事な事をいつまでもうやむやにしておく訳にもいきません。
そんな訳で、なぜドットバイドットの方が優れているのかを、小学生にも分かる様にご悦明したいと思います。
業務用動画機はドットバイドット
なぜドットバイドットの方が優れているかの根拠ですが、これはもう業務用の動画機を見れば一目瞭然でしょう。
例えばRED社のKOMODO 6Kですが、センサーサイズはスーパー35mmで、画素数は6Kフォーマットと同じ2000万画素です。
という事は、ドットバイドットで読み込んでいるという事です。
また比較的手の届きやすいブラックマジック社のBlackmagic Pocket Cinema Camera 6K Proは、センサーサイズがスーパー35mmで、6Kフォーマットと同じ2100万画素です。
国産で言えば、キヤノンのシネマEOS C70は、センサーサイズはスーパー35mmで、画素数はDCI4Kフォーマットと同じ880万画素です。
またソニーのFX3は、センサーはフルサイズの1200万画素で、上下をカットして16:9にすると1000万画素と4Kの800万画素より若干多いものの、ほぼドットバイドットと見て良いでしょう。
SONY FX3 |
全てを調べた訳ではないのですが、恐らく業務用動画機ならばどれもドットバイドット方式ではないでしょうか。
もしそうだとしたら、業務用動画機メーカーも、そしてそのユーザーもオーバーサンプリングの動画機を全く必要としていないという事です。
この事実だけで、ドットバイドットの方が優れていると、6~7割程度ご納得頂けたのではないでしょうか。
なぜドットバイドットの方が優れているのか
それではなぜドットバイドットの方が優れているのでしょう。
その理由も明快です。
その説明に際して、先ほどのソニーの説明図を見て頂けますでしょうか。
上にあります様に、7Kの画素数は3958×7032で2800万画素です。
一方4Kは2160×3840で800万画素です。
と言う事は、7Kの3.4画素を1画素にまとめれば、4Kの画像に変換できます。
それをイメージで表すと以下の様になります。
この黒い枠の3.4画素分の色情報を、赤い枠1個の色情報に無理やり変換してやれば、7Kオーバーサンプリングの出来上がりです。
もしかしたらオーバーサンプリングとピクセルビニングは同義語だと思われるかもしれませんが、本来のピクセルビニングは元の画素数(空間周波数)の整数倍が基本なのに対して、これは単に画像が破綻しない様に3.4画素をまとめているだけなのです。
なので、もし赤い枠の色情報が欲しいのであれば、(何もそんな面倒な事はせずに)最初から赤い枠を1画素にしてやった方が手間も掛からず、より正確な色情報が手に入るのは誰の目にも明らかです。
すなわち、オーバーサンプリングはドットバイドットの画質に近付く事はできても、ドットバイドットを抜く事は決してできないのです。
これでドットバイドットの方が優れていると、7~8割程度ご納得頂けたのではないでしょうか。
ドットバイドットの誤解
上記の様に同じ大きさの撮像素子であれば、オーバーサンプリングよりドットバイドットの方が画質が良いのは間違いありません。
ただし一部の機種(キヤノンのEOS RやEOS RP)においては、画像をクロップしてドットバイドットで4K動画を読み取る事があります。
この場合は、フルサイズをオーバーサンプリングした方が画質は良くなります。
一方ソニーのα7R II(4200万画素)においては、フルフレームとスーパー35mmで4K動画が撮れたものの、画質はスーパー35mmの方が上でした。
この理由はフルフレームの場合、画素混合で読み込んでいるのに対して、スーパー35mmの場合は5.5K(1500万画素)のオーバーサンプリングだったからです。
7Kと6Kのオーバーサンプリングではどちらが画質良いのか
それでは次に7Kと6Kのオーバーサンプリングはどちらが画質良いのかを考えてみます。
これも感覚的に考えると、7Kオーバーサンプリングの方が画質が良い様に思ってしまいますが、理論的にはドットバイドットに近い6Kオーバーサンプリングの方が画質は良いと言えます。
オーバーサンプリングはモアレやジャギーが本当に減るのか
ところで、前段でご紹介しましたα7IVの広告記事によれば、以下との事です。
オーバーサンプリングをすれば、モアレやジャギーが少なく、ディテール再現や解像感に優れた4K動画画質を実現する
これを読むと、明らかにドットバイドットの方がモアレやジャギーが出易い、と早合点してしまいます。
ですがこの文章には、大事な事が抜け落ちているのです。
それは、何と比較して画質が良くなるのかが、明確に書かれていない事です。
ではこの文章におけるオーバーサンプリングの比較対象は何かと言いますと、画素混合です。
実際α7IVの広告記事を注意深く読んでみますと、7Kオーバーサンプリングはフルサイズのときだけで、スーパー35mmではオーバーサンプリングを行なっていない様に読めます。
ではスーパー35mmの場合どうやって4K動画を取り込んでいるかと言えば、スーパー35mmにクロップしても画素数は依然1200万画素(5K)程度ありますので、4Kの800万画素にするために画素混合を行なっている様です。
ちなみにもし画素混合によって7Kから4Kに画素数を落とすとすると、隣接する3.4画素を1画素にまとめなければなりません。
ただしその様に端数がある場合は、画素混合と画素間引きを組み合わせて使う必要があるため、本来あるべき画素が所々抜ける事になるので、上の図にあります様に斜め線がギザギザになるのです。
それから比べれば、オーバーサンプリングは比較的元の画質を維持できるという訳です。
すなわちこの広告記事は、(ドットバイドットではなく)画素混合や画素間引きよりオーバーサンプリングの方がモアレやジャギーが少なくて画質が良いと言っているだけのです。
何しろこの記事の中には、ドットバイドットの話は一切出てきていないのですから。
8Kオーバーサンプリングは違う
さて、今まで散々オーバーサンプリングよりドットバイドットの方が優れているとお伝えしたのですが、ここで逆の事をお伝えしなければなりません。
それは8Kオーバーサンプリングで4K動画を生成したときです。
この場合は元の画素数(空間周波数)の整数倍ですので、これこそ正にピクセルビニングの基本中の基本と言えます。
これによって、解像度は1/4になるもののS/N比は2倍に向上します。
さらにこの場合、4画素を1画素にできますので、ベイヤー配列の2×2の4画素を1画素にまとめられます。
そうなるとローパスフィルターの性能次第では、偽色の一切ない4K動画が作れるのです。
8K動画の撮れる機種は今の所、キヤノンのEOS R5とR5C、ソニーのα1、ニコンのZ 9ですが、それらの4K動画の画質がどれくらいのものか見てみたいものです。
まとめ
それではまとめです。
①動画の読み込み方法は、オーバーサンプリングよりドットバイドットの方が画質が良いのは、業務用動画機がドットバイドット方式を採用している事からも明らかである。
②その理由は、複数の小さな画素の色情報をまとめるより、元々大きな1画素の色情報を入手した方が効率が良いからである。
③すなわちオーバーサンプリングはドットバイドットの画質に近付く事ができても、決して抜く事はできないのである。
④ただしクロップしてドットバイドットを行なう場合は、当然ながらクロップ無しのオーバーサンプリングの方が画質は良い。
⑤7Kオーバーサンプリングと6Kオーバーサンプリングでは、理論上ドットバイドットに近い6Kオーバーサンプリングの方が画質は良い。
⑥オーバーサンプリングではモアレやジャギーが減るというのは、画素混合と比べたときの話である。
⑦ただし8Kから4Kのオーバーサンプリングの場合、ドットバイドット以上に画質が良くなる可能性がある。
この記事が正しいかどうかは、α7IV(7Kオーバーサンプリング)とα7S III(ドットバイドット)、それにEOS R5(8Kオーバーサンプリング)の4K30Pで撮り比べればすぐに分かると思うのですが、誰か撮り比べてくれないものでしょうか。
サンプリング定理があるので7Kからのオーバーサンプリングでも4K画質は上がりますよ
自然界をドットに写すということはデジタル変換してるのと同じなので
お便りありがとうございます。
”自然界をドットに写すということはデジタル変換してるのと同じなので”、の続きを期待しています。
画質という観点では難しいですが、解像感や偽色などは全画像読み出しの方が良いことが多いです。最後に8Kの話で出てきた図のとおり、CMOSは3色の感光素子が隣に配置されているので、CMOSの1色分サイズしかない小さな白点を撮影すると、いずれかの色か、混合色が出力されます(いわゆる偽色)。対してCMOSの感光素子が小さくなれば、他の色にも均等に当たる率が上がり、出力色は白に近づきます。(偽色の減少)
実際にα7S iiiは、競合カメラと比較して解像感が悪いです。4Kで新聞を撮影すると、一目瞭然です。ただし、低解像度CMOSだと高感度、ローリングシャッターの減少、フレームレート向上などメリットも多く、その点を重視して低解像度カメラが重宝されています。またシネマカメラはグローバルシャッターを採用していることもあり、そもそも技術的に写真機並みに解像度を上げられませんし、写真機でも高解像度カメラの全画像読み出しで60fpsということは、現在は処理速度的に難しいです。
α7IVとa7SIII持ってますけど確かに4K動画の解像度感はα7IVの方が一段パリっとした絵ですね
逆にa7SIIIは暗所性能にかなり分があるのでシチュエーションによって使い分けてます♪
このギズモードのサイドバイサイドの動画とかが分かりやすいかと。https://youtu.be/qG4fAJCL968?si=d-bccK2o6hDI3ImG&t=385
動画見ました。
α7S IIIの方はピントが合っていない様に思います。
7Kオーバーサンプリングの方が良いと思い込んでいる人は、こんなコマがあるとすぐ飛びつくのでしょう。
根拠不明