動画のビットレートの話(後編)

前回までのお話

ビットレートの話の後編です。

前回は、ビットレートとは1秒間に動画ファイルに書き込まれるデータ量を指し、これが余りに低いとブロックノイズが発生するが、高くし過ぎても動画の容量は増えるものの画質は良くならない、とお伝えしました。

動画のビットレートの話(前編)

今回はその続きです。

ビットレートは、解像度やフレームレートを変えたら一緒に変えなければならない

それではビットレートについて、もう一つ重要な事をお伝えします。

それは、解像度やフレームレートを変えたら、ビットレートも一緒に変えなければならないという事です。

動画撮影時でしたら、解像度やフレームレートを変えると、下の表にあります様に選択肢が複数あるものの、必然的にビットレートもメーカーが設定した値に変わります。

α7S IIIの4K(左)とFHD(右)のビットレート

ですが、問題は自分で動画を編集して書き出すときです。

例えばですが、動画編集後に4K60Pで撮った動画を、汎用性が高くて容量の小さいFHD30Pに変換して書き出したとします。

その際、何も考えずにビットレートを同じにしたままにすると、(解像度とフレームレートは下がっても)動画の容量は全く変わらないのです。

重要なのでしつこくお伝えすると、4KをFHDにしても、60Pを30Pにしても、H.264をH.265のしても、ビットレートが同じであれば動画の容量は全く変わらないのです。

このため、もし4KをFHDにするならばビットレートは1/4にし、フレームレートを60fpsから30fpsにするのならばビットレートは1/2にし、コーデックをH.264からH.265にするのならばビットレートは1/2にしなければならないのです。

実際先ほどお見せした表においても、(多少のバラツキはありますが)4KをFHDにするとビットレートが1/4、フレームレートを半分にするとビットレートも半分になっています。

そんな訳で4K60Pで撮った動画を、画質を維持したままFHD30Pに変換するには、ビットレートを1/8にしなければならないのです。

なおFHD30P4K60Pにアップコンバートする事はマズ無いとは思いますが、その場合はビットレートを8倍にしなければなりません。

もし同じビットレートのままアップコンバートしたら、間違いなくブロックノイズが発生します。

妥当なビットレートとは

これでビットレートのほぼ全容が掴めたと思うのですが、ではビットレートはどれくらいが一番妥当なのでしょうか?

先ほどの表をもう一度添付しますと、同じ撮影条件(すなわち同じ解像度、フレームレート、カラーサンプリング、ビット深度)であっても、複数のビットレートを選択できる様になっています。

α7S IIIの4K(左)とFHD(右)のビットレート

この場合、動きの激しい撮影をするのならば高いビットレート、穏やかな撮影をするのならば低いビットレートを選択すれば良いと言えます。

とは言え、実はこの表にある低い方のビットレートでも、実際にはかなり高いと言えます。

カメラで撮る場合でしたら、ある程度余裕を持つ必要があるのですが、オリジナルの動画を自分で編集して書き出すのであれば以下くらいがかなり妥当の様に思います。

タイプ映像ビットレート、標準フレームレート
(24、25、30)
映像ビットレート、高フレームレート
(48、50、60)
8K80~160 Mbps120~240 Mbps
2160p(4K)35~45 Mbps53~68 Mbps
1440p(2K)16 Mbps24 Mbps
1080p(FHD)8 Mbps12 Mbps
720p5 Mbps7.5 Mbps
480p2.5 Mbps4 Mbps
360p1 Mbps1.5 Mbps

ではこの表の出所がどこかと言えば、実はYoutubeに動画をアップする場合の推奨ビットレートなのです。

Youtubeの管理元であるGoogleも、無駄に容量の大きな動画をアップされても困るし、かと言ってブロックノイズだらけの動画をアップされても困るので、かなり妥当なビットレートを提示しているとという訳です。。

まとめ

1)ビットレートとは、1秒間に動画ファイルに書き込まれるデータ量を指す。

2)ビットレートは、以下の式で求められる。

ビットレート=解像度(画素数)×1画素当たりのデータ量×フレームレート

3)動画のビットレートが、静止画のデータ量を参考としたビットレートより大幅(1/120)に低いのは、高度な圧縮技術を使っているためである。

4)とは言え、ビットレートを下げ過ぎると、無理に圧縮を掛けるのでブロックノイズが発生する。

5)ブロックノイズは、特にパン動作やズーミングの様に画面内が大きく変化したときに発生し易い。

6)またビットレートを一定以上高くしても、画質は良くならない。

7)このため理想的なビットレートは、その動画の中で最も変化の多いシーンでブロックノイズが出ないギリギリの所と言える。

8)同じ動画の記録方式であってもビットレートを複数選べる場合、動きの激しいシーンを撮るのであれば高いビットレート、穏やかなシーンであれば低いビットレートを選ぶべきであるが、カメラを無茶苦茶に振り回す様な撮影でなければ低いビットレートで十分である。

9)動画を編集ソフトでダウンサイジングしても、ビットレートを変更しないとファイル容量は同じになる。

10)編集した動画を書き出す際のビットレートは、Youtubeの推奨値が参考になる。