目次
はじめに
追尾フレームとAFフレームの違いが分かった所で、いよいよ本題です。
下はEOS R8のモニターの表示画面なのですが、左上にあるAFとあるアイコンが見えますでしょうか。
これを拡大すると下の様になります。
四角い枠にシャトルコックの様な絵が付いているのですが、これが何を意味しているか分かりますでしょうか?
カメラに表示されるアイコンは、残念ながらJISにも(当然ながらISOにも)規格化されていないのですが、それでも凡その察しは付くものです。
ですがこれが何を意味しているかは、分かる方は少ないでしょう。
サーボAF中の全域トラッキングとは
四角のマークはAFフレームの種類を表しているのですが、シャトルコックは(キヤノンにおいて)サーボAF中の全域トラッキングを表しているそうです。
それがどんな機能かは、EOS R8の使用説明書を見て頂きましょう。
これだけ読んでもピントこないと思いますので少し解説しますと、従来のEOS Rシリーズ(EOS R6以前)でしたら、被写体検知をしてくれるのはAFフレームを全域に設定したときだけでした。
ところがEOS R8においては、この機能をON(する)にすると、AFフレームの大小に関わらず画面全域において被写体を検知してくれるのです。
という事は、AFフレームは中央1点にしておいてこの機能をON(する)にしておけば、万一強い逆光時に被写体を見失っても、(全く関係のない背景にピントを合わせるのでなく)画面中央にある被写体に合わせてくれるのです。
これはかなり画期的ではないでしょうか。
やるなキヤノンと、思った次第です。
で早速使ってみた所、どうも変なのです。
サーボAF中の全域トラッキングの実態
例えばAFフレームを中央1点にしておいても、確かに人物を検知して追尾フレームが表示されるのですが、シャッターボタンを半押ししたとき、人物にピントを合わせるときと中央1点に合わせるときの二通りがあるのです。
どうしてそうなるのかとよくよく調べてみると、追尾フレームが中央1点のAFフレームに近いと白い枠になり、遠いとグレーの枠になります。
そして白い追尾フレームですとシャッターボタン半押しで顔にピントを合わせてくれて、グレーの追尾フレームですと中央1点のAFフレームにピントを合わせるのです。
もっとストレートに言うと、AFフレームに近い白枠の追尾フレームにはピントを合わせるけど、AFフレームから離れている灰色の追尾フレームにはピントを合わせてくれないのです。
何で?
キヤノンの設計思想
これに関するキヤノンの答えが、使用説明書にある以下の記述になります。
これを読んで、皆様はどう思われるでしょうか。
これまた勝手に解説させて頂きますと、キヤノンとしては中央1点AFにしている時に被写体検知を使いたいのならば、被写体を画面中央に寄せて撮れと言っているのです。
そもそも被写体検知の最大のメリットは、構図はそのままで被写体にピントを合わせられる事です。
にも関わらず、被写体を検知した追尾フレームにピントを合わせるために、構図を変えて被写体をAFフレームに近付けろとは、一体何を考えているのでしょうか?
それよりも被写体を検知しているときは画面のどこに有っても被写体にピントを合わせ、もし検知できなければ中央1点でピントを合わせる様にした方が、余程合理的な思想だと思うのですが、いかがでしょうか?
まとめ
そんな訳で、これは画期的だと思ったものの、残念ながらただのゴミでした。
もし画面全体で被写体検知を有効にしたいのならば、結局(EOS R6と同様)AFフレームを全域AFに設定にするしかないのです。
ついでに言わせて頂くと、これは”サーボAF中の全域トラッキング”と言いながらも、ワンショットAF中でも有効です。
何故”サーボAF中の”を付けなければならないのでしょうか?
もう支離滅裂と言わざるを得ません。
更に言えば、トラッキングとはある被写体を追い続ける行為を言うのであって、この場合は被写体検知を連続している行っているだけで、トラッキングとは異なる動作です。
このためこの機能を正確に呼ぶのであれば、”AFフレームが何であろうと画面全域で被写体検知をするけど、ピントを合わせるのはAFフレームに近い所だけの機能”、とするべきです。
一体全体あの(少年時代に憧れた)キヤノンは、どこへ行ったのでしょうか?
戻って来いキヤノン!
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