目次
はじめに
今回は、ストロボのガイドナンバー(GN)の話をしたいと思います。
今時でしたら、ストロボを使って撮った写真がその場ですぐ見れる事や、TTL調光が優秀になってきた事から、GNなど知らなくてもストロボ撮影が簡単にできる様になりました。
このため、いつかこのGNはストロボの光量を示す用途以外には使われなくなる可能性すらあります。
そんな訳で、(忘れてしまう前に)弊サイトが持っているGNに関する全ての情報をここに残しておきたいと思います。
GNが1.4倍になると光量は2倍になる
そのGNなのですが、恐らく数値が大きいほどストロボが明るく光るのは何方も良くご存知の事でしょう。
ではGNが2倍になると、光量はどれくらいアップするかご存知でしょうか。
例えばGN32とGN64では数値上2倍異なりますが、では光量はどれくらい異なるのでしょうか?
2倍異なる様に思ってしまいますが、実は4倍も異なるのです。
そしてGN22とGN32の様に1.4倍異なると、光量は2倍異なります。
すなわちGNは、光量の平方根に比例して大きくなるという事です。
光量が1/2になるとGNは1/1.4になる
また最近のストロボは、発光量を1/2、1/4、1/8の様に調整する事ができます。
この場合、もしフル発光時のGNがGN64だとしますと、発光量を1/2にするとGNは1/1.4のGN44、1/4にすると1/2のGN32、1/8にすると1/2.8のGN22に減ります。
GN64のストロボが2台あるとどうなる
それではそこで問題です。
GN64のストロボ2台を同時に発光したら、GNはいくつになるでしょうか?
ついついGN128になると答えたい所ですが、違います。
GN64のストロボ2台を同時に発光したら、発光量は2倍になり、GNは64の1.4倍でGN90になります。
もしGNをGN128にしたいのならば、GN64のストロボが4台必要になるという訳です。
GNと光量の計算方法
今までは光量が2倍、あるいは4倍と整数倍の場合をお伝えしましたが、では光量が1.5倍になったらGNはいくつになるのでしょうか?
その場合は、√1.5=1.2となりますので、以下の式の様に元のGNを1.2倍すれば求められます。
光量が変わったときのGN=元のGN×√光量の増加率
一方GNが1.5倍になったら光量は何倍になるかと言えば、以下の式の様に(1.5)²で2.25倍になります。
GNが変わったときの光量=元の光量×(GNの増加率)²
GNは絞り値に似ている
今までの話を聞いて、GNは絞りと似ているなと思われた方は、かなり鋭い方です。
絞りも、例えばF4とF8で数値が2倍(2段)異なると、光量は4倍異なります。
また絞りF4とF5.6で1.4倍(1段)異なると、光量は2倍異なります。
すなわちGNは、絞りの様に1.4倍が1段に相当するのです。
ではなぜ絞りが1.4倍(正確には√2)ずつ変化するかと言えば、絞りはレンズの開口部の面積ではなく、開口部の長さ(直径)で表しているからです。
絞り値を面積で表せば、他のシャッタスピードやISO感度と同じ様に光量と比例した値になったのにと思わないではいられませんが、これが後ほどお話しますGNの計算において役立つ事になります。
GNの体系は絞り値に似ている
そしてもう一つGNと絞り値との共通点があります。
大小さまざまなクリップオンストロボですが、そのGNは概ね絞り値に近い数値になっているのです。
例えば、上にありますキヤノンのストロボの場合、最大光量は左からGN60、GN43、GN32、GN27、GN9と、下にあります絞り値に近い数値になっています。
余談になりますが、現在クリップオンストロボで最も大光量なのは、恐らく下にありますGN80のニッシン製のストロボではないでしょうか。
ちなみに上にありますMG10は、高耐熱クオーツ管を2本使用しているそうです。
という事は、GN57(=80/1.4)のクオーツ管を2本搭載している事になります。
GNはISO感度でいくらでも上げられる
更にもう一つ知っておいて頂きたいのは、GNは絞りやシャッタスピードには一切関係しないものの、ISO感度を2倍(1段)上げるとGNは1.4倍になるという事です。
具体的には、ISO感度を100から200に2倍上げると、(光量が2倍になったのと同様に)GNは32から1.4倍の44にアップします。
更にISO感度を100から400に4倍上げると、GNは2倍の64にアップします。
このためISO感度を上げ易い夜間撮影でしたら、ISO感度を上げてGNをいくらでも上げられるという訳です。
ちなみにGN16(ISO100)の小型ストロボであっても、ISO1600に上げればGN64の大光量ストロボになってしまうのです。
このため夜間の撮影に大きなストロボを用意する必要はありません。
ただし日中シンクロでしたらISO感度を上げるのは難しいので、どうしてもGNの大きな大光量のストロボが必要になります。
ISO感度を上げた場合のGNの計算方法
前項においては、ISO感度が2倍とか4倍で、比較的計算が容易なケースですが、ではISO感度を100から125に1.25倍(1/3段)上げた場合はどうなるのでしょうか?
この場合は、下の式にあります様に1.25の平方根を求めて、それに32を掛けて36と求められます。
ISO感度を上げたときのGN=√(ISO感度の倍数)×元のGN
=√(125÷100)×32=36
なおこれは、先ほどお見せしました絞りの目盛りからも読み取る事ができます。
上の図をご説明すると、当初GN32だったのが、ISO感度が1/3段上がったのに伴い、GNも36に上がったという訳です。
GNを距離で割れば絞り値が求められる
さてすっかり前置きが長くなってしまいましたが、いよいよ本題です。
GN最大の利点は、GNを被写体まえの距離で割れば、最適な絞り値が分かる事です。
最適な絞り値=GN÷被写体までの距離
例えばGN32のストロボを使って4m先の被写体を適正露出で撮るには、32を4で割って8となり、絞りF8で撮れば良い事が分かります。
なぜこうなるかと言えば、常に以下の式が成り立つからです。
被写体までの距離×最適な絞り値=GN
この理由は、もし距離がn倍になると被写体に届くストロボの光量は1/n2に減ります。
その場合の絞り値は、レンズに入ってくる光量が1/n2になるため、1/n倍にしなければなりません。
このため、両者を掛ければ一定になると言えば、何となく説明になるでしょうか?
分かり難いので数値を当てはめると、もし距離が2倍になると被写体に届くストロボの光量は1/4になり、その場合の最適な絞り値はレンズに入る光量を4倍しなければならないため1/2倍になり、両者を掛ければ常に一定になると言う訳です。
いずれにしろ、誰が考え付いたか知りませんが、ウマイ手を思い付いたものです。
と言うより、もしかしたらこれを考慮して絞り値を1.4倍ずつ変化させる表示方法にしたのではなかとさえ思ってしまいます。
このためフィルム時代は、(撮った写真を直ぐに見れなかったため)ひたすらこの計算をしてストロボ撮影を行っていたという訳です。
ただしストロボ光を壁にバウンスさせたり、ソフトボックスやアンブレラを使ったりするとGNでは絞りを計算できません。
このため昔はどうやっていたかと言えば、事前に高価なポラロイドで写真を撮って露出を決めていたという訳です。
このため中判カメラのフィルムバックには、専用にポラロイドバックが容易されていたものです。
このためGNで露出を決められるのは、ストロボ光を被写体に直当てした場合だけになります。
と言いたい所ですが、そんな事はありません。
実はソフトボックスや天井バウンスを使った場合でも、その気になればGNを使って絞り値を求められるのです。
ソフトボックスを使ったらどうなる
先ずソフトボックスを使った場合ですが、これはソフトボックスの大きさ等にもよりますので、実測値をお知らせします。
例えば、GODOX TT685にワイドパネルを装着したときのGNがGN40だとします。
それを60×60cmのソフトボックスにセットした場合、GNは1/1.5のGN26に程度に低下します。
後はこのGNをソフトボックスから被写体までの距離で割ってやれば、絞り値が求められます。
天井バウンスを使ったらどうなる
天井バウンスを使った場合も、天井や壁の状態で異なりますので、実測値をご紹介しておきます。
例えば、GODOX TT685にワイドパネルを装着したときのGNがGN40だとします。
これを以下の様にバウンスさせると、GNが1/3のGN32になります。
後はこのGNをストロボから壁までの距離+壁から被写体までの距離で割ってやれば、絞り値が求められます。
まとめ
以上をまとめますと以下の通りです。
1. GNが1.4倍になると光量は2倍になる。
2. 光量が1/2になるとGNは1/1.4になる。
3. GNの体系は絞り値に似ている。
4. ISO感度を2倍(1段)に上げるとGNは1.4倍になる。
5. GNを距離で割れば絞り値が求められる。
6. その気になれば、GNはソフトボックス使用時や天井バウンスでも使える。
お役に立ちましたでしょうか。
コメントを残す コメントをキャンセル
コメントを投稿するにはログインしてください。