レンズ内手ブレ補正に関する各社の設計思想の違い

2022/11/24:更新

はじめに

今時でしたら普及クラス以上のカメラにボディー内手ブレ補正機能搭載は、常識の様になってきました。

ところが、レンズ内手ブレ補正の有無については、各社でその思想がかなり異なるのです。

レンズ内手ブレ補正の原理

ちなみにレンズ内手ブレ補正は、5軸対応のボディー内手ブレ補正と違って、主に望遠レンズで発生する角度ブレと、一部マクロ撮影で発生するシフトブレに対応しています。

それを知って頂いた上で、各社のレンズにおいてレンズ内手ブレ補正の有無を確認してみたいと思います。

F2.8通しの大三元ズームレンズ

下は、大三元と呼ばれるF2.8通しのズームレンズです。

種類ソニーニコンキヤノンパナソニック
F2.8
広角
ズーム

FE 16-35mm F2.8 GM

Z 14-24mm f/2.8 S

RF15-35mm F2.8L IS USM
N/A
F2.8
標準
ズーム

FE 24-70mm F2.8 GM II

Z 24-70mm f/2.8 S

RF24-70mm F2.8 L IS USM

S PRO 24-70mm F2.8
F2.8
望遠
ズーム

FE 70-200mm F2.8 GM OSS II

Z 70-200mm f/2.8 VR S

RF70-200mm F2.8 L IS USM

S PRO 70-200mm F2.8 O.I.S.

これをご覧頂きます様に、手振れ(特に角度ブレ)の発生し易い望遠ズームレンズには全社ともレンズ内手ブレ補正を搭載しているのに対して、手振れの発生し難い広角ズーム標準ズームにおいては、キヤノン以外はレンズ内手ブレ補正を搭載していません

それに伴ってか、キヤノンのレンズは他社と比べてかなりお高くなっています。

ではどちらの思想が、より合理的なのでしょうか?

幣サイトが思うに、恐らくこの様な高級レンズを装着するのは、当然ボディー内手ブレ補正を搭載した高級カメラでしょう。

だったら何も、(協調制御で手ぶれ補正効果が多少上がるとしても)高くて、重くて、耐久性も光学性能も少なからず劣る事になるであろうレンズ内手ブレ補正を搭載する必要はない、と思うのですがいかがでしょうか。

実際、(キヤノン以外の)ソニーもニコンもパナソニックも、同じ考えの様に思われます。

F4通しの小三元ズームレンズ

次にF4通しの小三元ズームレンズを見てみます。

種類ソニーニコンキヤノンパナソニック
F4

広角ズーム


FE PZ 16-35mm F4 G

Z 14-30mm f/4 S

RF14-35mm F4L IS USM

S PRO 16-35mm F4
F4

標準ズーム


FE 24-105mm F4 G OSS

Z 24-120mm f/4 S

RF24-105mm F4 L IS USM

S 24-105mm F4 MACRO O.I.S.
F4

望遠ズーム


FE 70-200mm F4 G OSS
N/A
RF70-200mm F4 L IS USM

S PRO 70-200mm F4 O.I.S.

するとご覧の様に、(大三元のズームレンズと同じく)広角ズームレンズにおいてはキヤノンだけ、望遠ズームレンズにおいては、全社レンズ内手ブレ補正を搭載しています。

興味深いのは標準ズームレンズで、この場合ニコン以外がレンズ内手ブレ補正を搭載しています。

この理由は、ボディー内手ブレ補正のカメラに装着されるかどうかではなく、むしろ望遠側の焦点距離が105mmまで延びたせいなのかもしれません。

そうなると望遠側が120mmのZ 24-120mm f/4 Sは、レンズ内手ブレ補正をより搭載しなければなりませんが、ニコンとしてはボディー内手ブレ補正で十分対応できると判断したのではないでしょうか?

もしくは、価格と光学性能を優先してレンズ内手ブレ補正を非搭載としたのかもしれません。

もしそうだとすると、むしろその潔(いさぎよ)さに好感が持てます。

広角系単焦点レンズ

最後に各社が用意している35mm F1.8と24mmの単焦点レンズを見ておきましょう。

種類ソニーニコンキヤノンパナソニック
35mm
FE 35mm F1.8

Z 35mm f/1.8 S

RF35mm F1.8 MACRO IS STM

S 35mm F1.8
24mm
FE 24mm F1.4 GM

Z 24mm f/1.8 S
450g

RF24mm F1.8 MACRO IS STM

S 24mm F1.8

するとここでも、キヤノンだけがレンズ内手ブレ補正を搭載しています。

果たして、手ブレの発生し難い単焦点の広角レンズにまで、レンズ内手ブレ補正が必要なのでしょうか?

この場合、他社より安いからそれでも構わないと思われるかもしれませんが、レンズ内手ブレ補正がなければ、もっと安くて軽くて光学性能が良くなったかもしれないのです。

ちなみに最近発表されたキヤノンのRF15-30mm F4.5-6.3 IS STMもレンズ内手ブレ補正が搭載されています。

こんな超広角系レンズにまで、レンズ内手ブレ補正が必要なのでしょうか?

まとめ

以上をまとめると、(一部の廉価レンズや制御が難しい大口径レンズを除いて)何でもかんでもレンズ内手ブレ補正を搭載しようとするのがキヤノン。

それに対して、レンズ内手ブレ補正搭載に慎重なのが、ニコン。

両社の中間が、ソニーとパナソニックといった所でしょうか。

以前でしたらレンズ内手ブレ補正を搭載したレンズの方が(非搭載のレンズに比べて)進んだレンズだと単純に思っていたのですが、手ブレ補正が実際には然程有効ではないと気付いた今となっては、ニコンの思想が最も合理的な様な気がします。

いずれにしろ自分の撮影形態において、手ブレ補正機能は本当に必要かどうか冷静に考えて損はない様に思うのですが、いかがでしょうか。

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