長い間疑問に思っていました。
ご存じの様にカメラのレンズは絞り開放で使うより、少し絞った方が解像度は良くなります。
ただし光の回折現象により、余りに絞り過ぎると今度は解像度が低下してきます。
このため、なるべくならば絞りはF8程度までに抑えるのが無難というのは良く知られた話です。
そこで疑問に思っていたのは、では撮像素子が小さいスマホのカメラはどうなのでしょうか。
撮像素子が小さければ、当然レンズも小さくなります。
そうなるとたとえ絞り開放で使っていても、常に回折の影響を受けて解像度は低下気味なのでしょうか?
それとも撮像素子が小さいと、回折の影響を受け難いのでしょうか。
以前から疑問に思っていたのですが、思い立って調べてみる事にしました。
目次
レイリーの限界分解能
そこで登場するのが、イギリスの物理学者レイリーが導き出した限界分解能の式です。
θ=1.22×λ/D
この式が何を意味しているかと言えば、θが2つの点光源を分離できる限界の角度(ラジアン)を表し、λが光の波長、Dがレンズの有効口径になります。
このためθが小さいという事は分解能が高いという事で、そのためにはDを大きくしなければいけないという事です。
分かり易く言えば、光の分離限界角度はレンズの有効口径にのみ反比例する、すなわちレンズの分解能は(撮像素子の大きさには一切関係なく)単純にレンズの有効口径にのみ依存するという事です。
それだけ分れば十分なのですが、念のためにスマホとフルサイズのカメラの有効口径を比べてみます。
スマホとフルサイズ機の限界分解能
例えばiPhone 15 Proのメインカメラの実焦点距離は6.86mm(フルサイズ換算24mm)で、絞りはF1.78です。
という事は、メインカメラの有効口径は6.86mm÷F1.78で3.9mmになります。
一方フルサイズで同じ画角の24mm F1.78における有効口径は、24mm÷F1.78で13.5mmになります。
このため単純計算では、フルサイズの方が(回折の影響を受けないので)3.5倍スマホより分解能が良いという事になります。
と言いたい所なのですが、そうではありません。
と言いますのは、この場合フルサイズのカメラの方が、スマホより被写界深度が浅くなります。
このためスマホと同じ被写界深度にするためには、撮像素子の対角線比である3.5を絞りに掛けなければなりません。
するとフルサイズのカメラの絞りはF6.2(=F1.78×3.5)になり、有効口径は24mm÷F6.2でスマホと同じ3.9mmになります。
まとめ
という訳で、当然と言えば当然ですが、スマホだろうがフルサイズだろうが、同じ被写界深度で撮れば同じ様に回折の影響を受けるという事です。
なおスマホのカメラにおいては、殆どの場合絞り機構はありません。
その理由は、①絞り機構を入れるスペースが無いとか、②これ以上被写界深度を深くする必要が無いのもあるでしょうが、これ以上絞ると回折の影響が強く表れ解像度が低下するのも、その理由の一つに加えたいと思います。
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