4K動画不要論

はじめに

4K、4Kへと草木もなびくではないのですが、今どき動画と言えば4Kが主流と言って良いでしょう。

ところが、動画を4Kで撮っても殆ど意味がないのです。

と言いますのは、例え4Kで撮った動画を4Kモニターで見た所で、目の分解能がそれに追い付いていないからです。

では異なる解像度の画像を見て、どれくらい違いがあるかについては、下の動画を見て頂ければと思います。

この動画においては主観的な4K動画の見え方について述べていますが、ここではもう少し理論的な話をしてみたいと思います。

人の目の分解能

人の目の分解能は、視力1.0の場合1/60度と言われています。

この場合、50cm先の物体を見たとしたら、直径0.15mmの点を認識できる事になります。

そうなると、4Kの27インチモニターにおける1画素の直径が0.15mmですので、27インチモニター以上の大きさであれば4K解像度を認識できそうです。

解像度\項目 モニタサイズ 24インチ 27インチ 30インチ 40インチ 50インチ
縦長さ 299mm 336mm 374mm 498mm 623mm
横長さ 531mm 598mm 664mm 886mm 1107mm
縦画素数 1画素の大きさ 1画素の大きさ 1画素の大きさ 1画素の大きさ 1画素の大きさ
4K 2160 0.14mm 0.16mm 0.17mm 0.23mm 0.29mm
WQHD 1440 0.21mm 0.23mm 0.26mm 0.35mm 0.43mm
FHD 1080 0.28mm 0.31mm 0.35mm 0.46mm 0.58mm
HD 720 0.42mm 0.47mm 0.52mm 0.69mm 0.86mm
WSD 480 0.62mm 0.70mm 0.78mm 1.04mm 1.30mm

ですが、これはあくまでも理想的な場合でしょう。

実際の分解能

では、理想的でない場合についてご紹介したいと思います。

まず視力1.0で分解能1/60度と言うのは、視力検査のチャートの様にあくまでも白黒の様にコントラストがはっきりしている場合です。

これはPCモニターで文字を見ているのと同じです。

この様な画像の場合、確かに視力1.0の人が50cm先の27インチの4KモニターでFHDと4Kを見比べたら違いが分かるでしょう。

ところが一般的な動画においては、レンズを介して物体を結像させるが故に、分解能を低下させる様々な要素があるのです。

1. コントラスト

先ずはコントラストです。

例えば下の様にCの文字が薄かったり、背景が濃かったりしてコントラストが低下すれば、当然ながら眼の分解能は低下します。

レンズの場合でしたら、フレア等によって少なからずコントラストは低下します。

2. 色差

或いは、色差の少ない似た様な色の場合でも低下します。

3. ボケ

更にはボケた場合も分解能が低下します。

これは目の分解能が低下すると言うよりも、映像自体の分解能が低下すると言った方が適切でしょう。

4. ブレ

最後はブレです。

動画の場合、動きを自然に見せるために故意にブレを作りますので、これによっても映像の解像度が低下します。

すなわち視力1.0の人が一般的な動画を見ても、分解能1/60度を達成するのは極めて難しいという事です。

視力0.5の分解能

そうなると、たとえ視力1.0であったとしても一般的な動画を見る場合は、分解能は少なからず低下すると考えて良いでしょう。

当然ながら動画によって低下する度合いは異なるでしょうが、仮に視力0.5レベルに低下した場合を考えてみます。

すると分解能は1/30度になり、50cm先の物を認識できる最小直径は0.29mmになってしまいます。

これを先ほどの表で見ると、50インチの4Kモニターが必要になります。

解像度\項目 モニタサイズ 24インチ 27インチ 30インチ 40インチ 50インチ
縦長さ 299mm 336mm 374mm 498mm 623mm
横長さ 531mm 598mm 664mm 886mm 1107mm
縦画素数 1画素の大きさ 1画素の大きさ 1画素の大きさ 1画素の大きさ 1画素の大きさ
4K 2160 0.14mm 0.16mm 0.17mm 0.23mm 0.29mm
WQHD 1440 0.21mm 0.23mm 0.26mm 0.35mm 0.43mm
FHD 1080 0.28mm 0.31mm 0.35mm 0.46mm 0.58mm
HD 720 0.42mm 0.47mm 0.52mm 0.69mm 0.86mm
WSD 480 0.62mm 0.70mm 0.78mm 1.04mm 1.30mm

さらに50インチのモニターですと、さすがに50cmの近距離から見る事はないでしょう。

では仮に1m離れて見るとすれば、認識できる最小直径は0.58mmになり、その場合は100インチの4Kモニターが必要になるのです。

或いは、たとえ4K動画を1mの距離から50インチの4Kモニターで見たとしても、FHDの動画を見ているのと同じにしか見えないのです。

まとめ

という訳で、確かに理想的な映像、例えばPC上の文字やテレビゲーム等の様に1画素毎に異なる色を配色できるのであればコントラストも色差も高い映像になりますので、人の目は4K画像に対応していると言えます。

或いは量販店のテレビ売り場に行けば必ず表示されている都会の夜景も、コントラストがはっきりしているので4K動画に適しています。

このため、テレビやモニターについては4K対応にしておく価値は十分あります。

ところが、実際にカメラで撮った4K動画となると、レンズを介して結像させるが故にコントラストや色差の低下、或いは少なからずボケやブレがある事を考えると、4KとFHD動画を見分けるのは極めて難しいと言えます。

このため、自分で撮る動画については、FHDで十分だと思う次第です。

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