HLGとHDR PQの違いをご存知でしょうか?
HLGはニコン、ソニー、パナソニック、フジフィルム、OMDSが採用しているのに対して、HDR PQはキヤノンしか採用していません。
先に結論をお伝えすると、以下の様になります。
いずれもHDR形式で記録された画像をモニターに出力する方式を指し、HLGは画像の明るさの全領域をモニターの輝度範囲の中に映し出し、HDR PQはモニターの輝度範囲までの明るさをリニアに反映し、それを超える明るさは真っ黒もしくは真っ白に表現します。
このためHLGは黒潰れや白潰れがなく画像を見れるものの、見た目より不自然になります。
一方HDR PQは、黒潰れや白潰れが発生するものの、自然な表現になります。
以下、もう少し詳しくご説明していきます。
HLG(Hybrid Log Gamma)とHDER PQ(Perceptual Quantization)は、いずれも国際規格であるITU-R BT.2100にあるHDR(High Dynamic Range)画像の記録方式を指します。
両者の違いについては、こちらのEIZOの記事で詳しく述べられているのですが、少々難しいのでもう少し分かり易く解説を加えたいと思います。
当該記事によると、両者の違いは以下の通りです。
項目\種類 | PQ (Perceptual Quantization) | HLG (Hybrid Log Gamma) | |
用途 | Web配信、映画 | 放送、ライブ中継 | |
特長 | 人間の視覚特性に基づく新たなガンマカーブ | SDRテレビと互換性のあるガンマカーブ | |
輝度値の扱い | ピーク輝度(最大輝度)は10000cd/m2 絶対値で扱うため、表示デバイスによらず一定 |
相対値で扱うため、表示デバイスによって変動 | |
黒レベル | 0.005cd/m2以下 | 0.005cd/m2以下 | |
提案団体 | Dolby | BBC/NHK | |
関連規格 | SMPTE ST 2084、ITU-R BT.2100 | ITU-R BT.2100 | |
互換性 | 人間の視覚特性に近い見え方 | ◎ | ○ |
SDRテレビでの見え方 | × | △ | |
Live放送 | △ | ◎ |
これを見ると、人間の見え方に近いのはHDR PQでWeb配信や映画に向いており、一方HLGは放送やライブ中継に向いていると言えそうです。
ただし残念ながら、これだけではさすがに良く分かりません。
ですが、下のチャートを見るとかなり疑問が解消します。
先ずHLGにおいては、モニターの最大輝度の中に動画ファイルの持っているダイナミックレンジを全て映し出そうとします。
このため、最大輝度の暗いモニターで見るとかなり軟調の画像になるものの、明部も白飛びせずに表現されます。
一方HDR PQにおいては、モニターの最大輝度までのダイナミックレンジを映し出し、それを超えるものは真っ白とするので、見え方(諧調)は自然なものの明部は白飛びする事があるという訳です。
ではどちらが良いかと言えば、(好みの問題かもしれませんが)少なくと画像の中には真っ白と真っ黒が存在しなければいけない、或いは自然に見えるのが一番、と思っている方にとってはHDR PQです。
一方、今時分のシネマチック映像と呼ばれる、コントラストの低い眠い画像が好みであれば、HLGの方が合っていると言えるでしょう。
また前述のHLGが放送やライブ中継に向いているというのは、撮影環境の明るさが急激に変わっても白つぶれせずに全ダイナミックレンジがモニターに表示されるので、多少ラフに撮っても問題ないという事なのでしょう。
それに対してHDR PQは、それなりに露出に気を付けなければならないものの、映像作品に向いているという事なのでしょう。
そんな訳でキヤノンが他社と違って、リアルな見え方を重要視したHDR PQを選択したのは、快挙と言って良いのではないでしょうか。
とは言え、そのうち両方の方式で撮れるカメラが出てくるのかもしれません。
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