動画のフレームレートと低速シャッタースピードの話

はじめに

一般的に知られている動画撮影で使える一番遅いシャッタースピードは、フレームレートの逆数です。

具体的には、動画のフレームレートが30fpsならば、使えるシャッタースピードは1/30秒までです。

ところが読者から頂いた情報によれば、Nikon Z 9以外にもソニーのα7Cα6400でもフレームレートの逆数より遅いシャッタースピードが使える様です。

また別の読者情報によれば、BPCC(Blackmagic Pocket Cinema Camera) 4Kや6Kでも同じ様な事ができる様です。

Blackmagic Pocket Cinema Camera 6K G2

そうなると、どうやらフレームレートの逆数より遅いシャッタースピードが使えるカメラはそこそこありそうな感じです。

という訳で、一体どうやったらそんな芸当ができるのかを、無い頭をふり絞って考えてみました。

なぜ動画では遅いシャッタースピードが使えないのか

先ずは、何故動画ではフレームレートの逆数より遅いシャッタースピードが使えないと言われているのかについて考えてみます。

例えばですが、30fpsの動画を撮る場合、1秒間に30フレーム(枚)の画像を生成しなければなりません。

30fpsの場合の1フレームの所要時間

という事は、1フレームの所要時間は1/30秒(0.03秒)です。

そうなると、当然ながらシャッタースピードを1/30秒(0.03秒)より遅くはできないという訳です。

動画の画像処理はどうやって行われるのか

とは言いながらも、1フレームの時間とシャッタースピードが同じならば、1フレームと1フレームの間に画像処理をしたり外部メモリーに書き込んだりする時間なんて当然ありません。

このため、恐らく書き込み用(W用)と読み込み用(R用)のバッファーを2つ用意し、撮影中は書き込み用バッファーに1フレーム分の画像データを書き込み、同時に読み込み用のバッファーにある前の画像データを画像処理して外部メモリーに書き込んでいるのでしょう。

動画生成ダイヤグラム

そして、1フレーム分の作業が終わったら、書き込み用と読み込み用のバッファーを切り替えて、同じ事を繰り返えせば、遅延なく動画を記録できます。

フレームレートより遅いシャッタースピードを使うにはどうすれば良いのか

もしそうだとすると、フレームレートより遅いシャッタースピードを使うには、複数フレーム分の書き込む用と読み込み用のバッファーを用意しなければなりません。

具体的には、30fps1/5秒のシャッタースピードを使うとしたら、1/30秒で撮った6フレーム(=1/5÷1/30)の画像を加算すれば、1/5秒のシャッタースピードで撮ったのと同じ画像になります。

6フレーム分のバッファーを搭載した動画生成ダイヤグラム

という事は、通常より6倍もバッファーを持たなければなりません。

そして1フレームの作業が終了したら、書き込み用(W用)と読み込み用(R用)のバッファーを切り替えて、更に書き込み用バッファーにある一番古いフレームに新しい画像データを上書きすれば、1/5秒で撮った動画が生成できます。

ちなみに1フレーム分のバッファー容量は、仮に2400万画素で内部処理が14ビットのカメラだとすると、24M×14ビット/8バイトで42MBになります。

バッファーが12フレーム分だとすると、その12倍で504MBのバッファーが必要になります。

もしかしたら1GBを軽く超えるのではないかと思ったのですが、それ程でもありませんでした。

フレームレートが変わったら低速シャッタースピードはどうなるのか

今までは30fpsの場合を考えていましたが、次に動画のフレームレートが変わったらどうなるのか、考えてみます。

先ず24fpsの場合、シャッタスピードは1/24秒まで遅くでき、6フレーム分のバッファーがあるとしたら、6×1/24秒で1/4秒のシャッタースピードが使える事になります。

また60fpsの場合、シャッタスピードは1/60秒まで遅くでき、6フレーム分のバッファーがあるとしたら、6×1/60秒で1/10秒のシャッタースピードが使える事になります。

最後に120fpsの場合、シャッタスピードは1/120秒まで遅くでき、6フレーム分のバッファーがあるとしたら、6×1/120秒で1/20秒のシャッタースピードが使える事になります。

まとめ

そんな訳でまとめです。

①バッファーの少ないカメラの場合、動画で使える一番遅いシャッタースピードは、フレームレートの逆数までである。(30fpsなら1/30秒まで)

②ただしバッファーが大きなカメラの場合、それより遅いシャッタースピードが使える。

③またバッファーが大きなカメラの場合、フレームレートが低い程、遅いシャッタスピードが使える。

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